着物を装う際、帯に扇子を挿すことがあります。では、その際に親骨を正面にするべきか、扇面を正面にするべきか、悩ましく思われたことございませんか? 扇子の種類や幅によって変わるのか、それとも正式な決まりがあるのか?
着物に扇子を挿すという些細な所作にも、 知っていると心の余裕が生まれ、好感度が上がるポイント が数多く存在します。お心穏やかに装いをお楽しみいただきたく、ご留意いただきたい内容を全力で綴ります。
扇子の向きについて
基本的には 金色の面が正面を向くように挿します。
女性の着物の場合
黒留袖など女性のお着物であれば、下前襟の流れる先:左胸側に、金を表に扇の要を下にして(開くほうが上です。)少し傾けるように帯と帯揚げの間に挿しておきます。先端:開くほうの出具合は指3本位:帯から2~3㎝ほどを目安にされてください。
また、花嫁の婚礼衣装(色打掛)でも同様に 金色の面を正面 にします。ただし、 白無垢の場合は白地の扇面が正面 になります。
男性の着物の場合
男性の礼装用扇子(白扇)は、通常 右手で持つ のが基本です。しかし、手を空けたい場合は 袴の内側、角帯と着物の間に挿します。このときも、 左胸側に要を下にして、地紙が見えるように挿す のが一般的です。
礼装時の扇子の使い方
注意点
礼装用の扇子は、 涼を取るために仰ぐものではありません。夏扇子のように広げて使うのはマナー違反とされているため、十分ご注意ください。
立礼時の使用
結婚式などの場では、立ったまま挨拶をする 立礼 が求められることがあります。その際、 扇子は閉じた状態で使用 し、親骨が上にくるように 右手で持ち、左手を下から添える のが基本です。扇子の高さは おへその前あたり が適切とされています。
座礼時の使用
座礼をする際は、 扇子を閉じた状態で膝の前に置き、礼を行います。茶道などの場では 茶扇子 が用いられ、相手やお道具に対する謙虚な気持ちを表すための道具として活用されます。
お茶席での扇子の使い方も独特で、帯の間に差しておきます。流派やご師事されてる先生のご意向で異なるところもあるかもしれませんが、お茶室では、挨拶をする際やお点前の際に扇子を出し、それ以外の時間は帯の間にしまっておくのがマナーのようです。
扇子を広げて使う場面
基本的に、礼装用の扇子(末広)は 広げずに使う のが原則です。ただし、例外として 物を載せる台として使用する場合 には広げることがあります。
茶道など扇子を常に持つ和の習い事ですとお月謝を渡したり 金品を載せる方法として使われる事もございます。茶道以外の一般生活でも取り入れられている趣がございます。
現代でも広く継承され古くより伝統と格式ある礼法を紡がれているある流派では、正式なお作法としてご祝儀などをお渡しするとき、切手盆の代わりに広げた扇子に乗せてお渡しされるとのことです。
お受取り側となるお相手が培われてきた慣習や流派にも寄るところが大きく、例えば大勢が集う混雑している受付では略して直接手渡しという場面もあるかと存じます。しかしながら正式には香典も祝儀も直接手で持って渡すのは失礼とされている趣ございます。1対1で直接相手にお渡しになる際は直接手で 持たないようにされるほうが宜しいでしょう。
扇子での授受の流れ(例:香典の場合)
- 扇子ごと香典袋を受け取る。
- 香典袋と扇子を机(または畳)に下ろし、一旦置く。
- 香典袋を扇子の横に下ろす。
- 扇子を閉じ、相手に返す。
些細な所作にも
着物に扇子を挿すという些細な所作にも、 知っていると心の余裕が生まれ、好感度が上がるポイント が数多く存在します。
お着付け教室では 「金色側が正面に向くように挿します」 と基本を教わることが多いかと思いますが、その背景には 長い歴史と深い礼法の文化 が紡がれているようです。
皆様の着物の装いにおける より美しい振る舞いの一助 となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。